美術は心の栄養

子どもは描画の初期段階から自由にスクリブルを描くことを許されるべきであり、絵画指導の
目的は画家を育てるためのものではなく、また、子供が絵において得られる創造能力を抑制さ
せるものでもなく、それは発揮させるものでなければなりません。
そして、自発的絵画の大切な目的は絵を描き上げることではなく、描く行為そのものなのです。
これらの要素がバランスよくとりいれられてくることで、絵を描くこと(美術活動)そのものが
心の栄養になっていき、生きる意欲や考えようとする力を育んでいくのです。

幼児、児童の教育改革が取り沙汰されてから地域密着型の教育が叫ばれている昨今、
子どもたちへの教育は一家庭だけの問題ではなく、人とのつながりや、
思いやりの心を社会全体で考えることが求められています。

表現の分野での美術活動の中にも、その大切さを改めて考える動きが顕著に見られるようになってきています。
もともと芸術というのは他者との承認関係があって初めて成立するもので
一人ではその価値も喜びも得ることはできないといわれています。

そして、その芸術の心は人や自然との調和を容易に生みだし、思いやりの心を育んでくれます。
私たちが小さな子どもたちに芸術指導を行う目的はすべてその根幹を大切にしながらの思考力の育成であり、
想像性を伸ばすための一助とならなければなりません。

KGNの美術の教師は幼稚園や学校の教育のみならず
美術の指導を行う上で、子どもたちと共に
学び成長していく「共育」という考え方を大切にしています。
教師は子どもたちの可能性を信じ、子どもたちは未知への興味と好奇心を感じながら
創造世界の中で多様性のある思考を模索しなが
らいろいろな情報や方法をまとめあげていきます。

大人は「いっぱいの世界」の中で社会をコントロールするために、必死になって秩序やルールを作り出していますが、
小さな子どもたちは「空っぽの世界」に人間らしく生きるための「智慧」を取り入れようとしているようです。
毎年、子ども芸術ネットワーク(KGN)では主に幼児教育に携わる先生方を対象とした
美術の講座活動「頭足くん」を全国各地で実施しています。

どの講座でも参加して頂いた先生方には、教師と子どもたちとの繋がりが単なる教師からの一方的な言い伝えではなく、
「共育」という有り方を大切にしながら「教師と生徒」「社会と子どもたち」の
調和につながる指導方法やカリキュラムをご紹介しています。

自由にクレヨン君たちと遊ぶ2歳児。
その線から教師は建物やトンネル、橋、駅などを子どもたちとたくさんお話をしながら画面に張り付けました。

その教師の言葉と協働作業により、子どもたちはますますクレヨンたちとの遊びに夢中になるものです。
これはいわば巨大な絵本作りです。この絵本作りから社会へ立ち向かえる方向性のある人間力を育んでいきたいのです。