社会の権威の中で育つ子どもたちにとって、正しく物を見て、豊かな想像性を育むには、
大人の子どもひとりひとりの成長を願う暖かい助言と適切な環境が必要です。

ゆえに、間違った大人の価値観を押し付けることなく、
一人ひとりの子どもを見極め、また、子どもの表現そのものを大切にしながら、
子どもの伸びようとする思考力を引き出し育てることが大切であることはいうまでもありません。

芸術には、育ちゆく子どものさまざまな心を、内面から引き出し育てる力があります。
私たちはその心そのものが子どもの表現であり、芸術であると考えています。
乱雑な線、何を書いているのかわからない形にもちゃんとした理由があり、
子どもの甘えも、怒りも、喜びも、悲しみも、
それらは結果のみではなく、
その表現のプロセスの中にとても重要な芸術があると考えるのです。

また、芸術は子どもが自分の存在を示すために、
未来と過去を行ったり来たりを繰り返しながら、
他者との関係性を見つけだし、自分がどんな人で、
どこから来てどこへ行くのかを探し出す手助けをしてくれていると感じる時があります。
そして、こどもの表現が作者の喜びに変わるとき、それは芸術力となって、
まるで不思議な魔法を手に入れたかのように、他者を思いやり、
命の大切さを引き出してくれているに違いないことでしょう。
子どもの芸術力で社会の人たちとのつながりを作れたら、
こんなすばらしいことはないと思います。

私たちには、そんな子どもの芸術力を社会に示すための目的があります。
また、なにげない一人ひとりの子どもの表現が主役となって、日本中の地域と地域、
人と人を結びつけ、同時にその作者自身にも生きる勇気や希望を持ってくれることを願っております。